top of page
DSC_0382_edited_edited.png
「新規・灌仏盤の制作」 ~保存と制作を通して歴史の物語を紡ぐ

素材.     ​トチ材・漆・金粉

灌仏盤とは、誕生仏(お釈迦が生まれた時の姿)を安置するときに使用する大きな器です。 お寺では4月8日のお釈迦さま誕生日を祝う行事(お花祭り)の際に使用し、参拝者は柄杓で甘茶を像にそそいでお祝いします。

2023年の5月頃、青森の寺院から灌仏盤の修理依頼がきました。

この灌仏盤は毎年灌仏会の際に使用し、ここ数年は行事の際、水漏れするようになり、不具合が生じてきたとのことでした。直径約40センチ、高さ約14センチのとても大きな器でしたが、一本の木から彫出され、木地に布貼りした上で漆塗りを施し、内側は朱塗り、外側は濃緑で塗られ、沈金技法で蓮の葉脈が描かれていました。損傷状況を確認すると過去に干割れを修理したようの痕跡が数箇所見られ、また、漆が剥落している箇所もありました。そして付随する桐箱の内側には墨書があり、文化11年(1814年)に再興したものであること、石川県の職人に依頼したことなどが書かれていました。寺院の創建が慶長七年(1612年)であることから、約200年後に再興されたものであることが分かり、来歴も確認することができました。

事前調査を踏まえ、これからどのように修理するか方針を考えることにしました。考える中でふと、これは修理する必要はないのではないか、修理するのではなく、新たに灌仏盤を制作してはどうかという別のアイデアが浮かんできました。

前述の通り、灌仏盤はお寺創建から200年後に再興されたものであること、再興から約200年が経過し今(2023年)があること。このことは単なる偶然ではないのではないかという思いが持ち上がってきました。新たに灌仏盤を制作することは200年を区切りとして2度再興されたものとして、のちのちの世にお寺の歴史の物語として伝わる良い機会になるのではと考えました。そこで現在の灌仏盤は現状のまま別保存にして新たな灌仏盤を制作するという方向でお寺にプレゼンする事としました。

お寺の方もその考えに大変賛同してくださり、新規灌仏盤制作プロジェクトとして事業がスタートしました。

制作にあたっては現物を踏襲した意匠が良いとの意向を受け、使用する材料や技法、来歴などを踏まえて取り組む事としました。木地制作は前灌仏盤同様に石川県に住む木工轆轤師(知人であり、木工作家)に依頼することにしました。直径40センチを1材で彫刻することができるトチの木を購入し、約2年半乾燥させた上で、木工工程に入りました。木地が完成し、漆工工程に入り、布貼りの上に下地し、漆塗りを施しました。葉脈も沈金技法(石川県の漆芸で主流)で再現しています。(漆工工程は当工房の外部スタッフが担当しました。)

そして2026年3月についに完成・納品することができました。今年の灌仏会前にはお檀家さんにお披露目されたという嬉しい報告を受けています。これから新・旧の灌仏盤が末長く後世に伝わっていくことを心から願うばかりです。

 

今回の本事業は、文化財を修理という視点から離れ、保存という観点からアプローチし、歴史を紡ぎ、守り受け継ぐことのできた良い事例となりました。

修理をご依頼いただいた灌仏盤
​新規作成した灌仏盤
P2043959_edited.jpg
  • Facebookの - ブラックサークル
© 株式会社 東京文化財センター

※当ホームページ内の画像・テキスト等の無断使用を禁じます。

bottom of page