仁王像ー制作工程

仁王様は通常、寺院入り口の左右にたち一体ずつ安置されます。仁王様は、寺院の中に仏敵が入ってくることを防ぎ、その仏敵から仏さまや我々を守ってくれる役割があるからです。つまり、ガードマンです。
そういった役割から仁王さんは強くなければなりませんし、しっかり、仏敵に睨みをきかせ、守らねばなりません。そのため、仏敵を威嚇するため、お顔は憤怒の表情をしています。体は全身に血をみなぎらせ、肌の色は赤色。たくましい筋骨隆々の姿をしています。立ち姿は「びくとも動かないぞ!!」と脚を広げ、しっかりと大地を踏みしめます。(仁王立ち)
口を大きく開け、門に向かって右に立っている像が「阿形像」。口を閉じ、向かって左に立っているのが吽形像です(逆の場合もあります)。
阿形像は怒りの表情を前面にだし、吽形像は怒りを内に秘めた表情にしています。そして、仏敵を退散させるための武器を持っています。吽形が金剛棒、阿形像が金剛杵を持たせています。
1.
木の調達
青森ひばを乾燥させて使用しました。


2.
粘土原型制作
仁王門の寸法の縮尺の木枠を作り、像の大きさ・動きを決め、粘土で精密に原型を制作しました。その後、石膏取りを行い、原型としました。





3.
木組みを考える
原型を3D撮影し、データを元に最適な木組みを試行錯誤の上に決定していきます。まずはマケットサイズで。その後、約2.5倍の実際のサイズの材を組んでいきます。


粘土原型と同サイズで仮に組んで確認しつつ決定していきます。

実際の大きさの材です。
身長174cmの私と比べると大きさがよくわかります。
像高さ、約2m60cm。 天衣も着くともっと高くなります。


3Dデータで正射投影(オルソ)の原寸大の図面を作成し、マケットに図面と同じ水平・垂直に経線をいれ、材にも同じく水平線をいれます。
4.
鋸入れ・粗彫り
鋸、丸鋸、バンドソーなどで大まかに落とし、鑿で彫り進めます。


5.
体幹、軸足になる材を立ててみます
吽形像の軸足。五寸画角の材を4本矧ぎ合わせています。



6.
荒彫り
ひたすら彫ります。寄せ木造りでは複数人で作業を進められるという大きな利点があります。みんなで彫り進めます。



7.
荒彫り
彫りを進めます。
形がだいぶ見えてきましたが、まだ重すぎて像を立たせることができません。

8.
内刳り
内刳りは軽量化させる目的と、材の割れを防ぐ目的があります。
それにしても大きい像なので、内刳りを始める と仕事場は足の踏み場がなくなりました。



9.
内刳りを施すと、やっと立てられる重さになりました。ラッシングベルトで各部材を固定して立てました。すごい迫力!!感激!!


10.
腕・手首・足先・髻などの各部材を彫刻していきます。



11.
天衣、岩座のための各部材をそろえ彫刻していきます。



12.
全体がそろいました。細部の彫刻を進め仕上げていきます。

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13.
仮設置
部材がまだ未接着の状態で、一度お寺に運び込んで、目線や像の納ま り具合などを確認しました。搬入のシュミレーションをしました。


14.
全体の接着と体内納入品
檀家樣方からお預かりした写経と御住職様に書いて頂いた木札を体内に納入しました
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15.
木地完成

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16.
生地固め・錆び漆
漆を薄く塗って固めます。そして錆び漆で木地の表面を覆い漆下地を施しました。
17.
白土下地
彩色は古典技法に則って、天然の顔料と膠を使い日本画の技法で彩色しています。 まず、下地の白土を薄く何度も塗り重ねます。

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18.
彩色
仁王の肌の色は朱・弁柄など色味の違う顔料を重ね、深みをつけます。


お像に一番合う、 華やかでありつつも落ち着いた色を目指し 決まるまで 何度も何度も、やり直しました。
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文様の意匠は、奈良時代の塑像・東大寺法華堂執金剛神 立像の一部を参考に取り入れました。暈繝彩色の宝相華 文。赤系・青系・緑系・紫系の3~4段の暈繝彩色です。 この仁王像の彫刻を生かす、やや柔らかい色調を意識し 天然の岩絵の具・土性顔料を厳選しました。
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